高強度短パルスレーザー光を物質に照射してターゲット表面にプラズマを形成し、その冷却過程によりX線パルスを発生するレーザープラズマX源は、次世代リソグラフィーや物性測定や生体観察等の広い分野に有益な極端紫外からkeV領域に渡るX線パルスを、放射光のような大規模な設備を必要とせずに実験室レベルで発生させる手段として注目を浴びている。特に、励起レーザーに超短パルスレーザーを用いた場合には、得られるX線のパルス幅も数ピコ秒程度と、放射光施設では得ることが難しいX線の短パルスを発生させる事ができ、時間分解X線回折測定を始めとする物質の過渡応答特性を調べる為の時間分解計測用の光源に利用されてきた。しかしながら、放射光施設に比べると得られるX線のフォトン数が圧倒的に少ないために、計測に困難や制限を伴う事があることが指摘されていた。そこで我々は、ターゲット表面にナノ構造を形成しレーザー光とターゲットとの相互作用領域を広げることで、レーザープラズマからのX線発生量の増強を行う手法の研究を行ってきた。我々はこれまでに、ナノ構造ターゲットとしてポーラスSiターゲット、アルミナナノホール配列ターゲット、金ナノシリンダー配列ターゲット、垂直配向カーボンナノチューブターゲットを提案し、軟X線領域、水の窓領域、keV領域において一桁から数十倍のX線発生量の増強を達成することができた。