Na原子は古くから基礎物理を解明する為の原子分光や原子冷却の研究対象とされてきた。しかしながら、これまではNaの吸収線に相当する波長589 nmの適当な固体レーザー光源が無かった為に、分光や冷却には主に色素レーザーが用いられ、安定性や日々のメインテナンス、狭線幅化の面で問題があった。最近、この色素レーザーを波長1064 nmと1319 nmの2台のYAGレーザーの和周波光によって置き換える提案がなされているが、和周波光への高い変換効率を達成する為には、一般には入手困難な十数ワットクラスのポンプレーザーを必要としたり、複雑なフィードバック制御を要する二波長同時共振器を必要としている。そこで我々は、和周波光発生に周期分極反転LiNbO3(PPLN)リッジ導波路モジュールを用いる事により、市販のYAGレーザーからのエンハンスメントキャビティー無しのシンプルな構成でのシングルパスでの波長変換のみで、589 nm光への高い変換効率と高出力を得た。達成された効率は、レーザーパワーに対する変換効率で41%、PPLN結合パワーに対する変換効率では、1064 nm光に対して70%、1319 nm光に対して90%であった。